受動態とは受身文のことです。受身文とは、「~される」という意味になる文のことです。
受動態の「~される」という意味は動詞の過去分詞形で表します。過去分詞形は多くが~edの形で表されますが、動詞によってはdo【原形】,did【過去形】,done【過去分詞形】のように不規則に変化する動詞もあります。それらの形は少しずつ慣れるので今のところはさほど気にしなくていいでしょう。
それ以上に大切なのは、この受動態を学ぶ意義です。ここで学ぶ過去分詞という品詞は【分詞】という文法分野で再び登場します。そして今回の【受動態】を理解すれば、【分詞】という文法分野はスラスラ理解できますし、文法問題も瞬間的に解けるようになるのです。英文法はそれぞれの分野が密接に関連して一連の大きなストーリーがつくられているのです。
ちなみに過去分詞は英語で “Past Particle” といい、p.p.と短縮された形で表記されます。ここでも今後、p.p.と表記したいと思います。
受動態(受身文)の基本型
受動態は基本的に「Sは~される」という意味になります。そして【S be p.p.】の形になります。まずは日本語で受身文がどんなものかを確認してみましょう。
「彼はその家を建てた」
↓(受身文にすると…)
「その家は彼によって建てられた」
日本語に文型をチェックしてみます。
「その家を」という目的語 (O) を主語 (S) にしました。すると受身文では「~を」という目的語 (O) がなくなりましたね。
受身文とは目的語 (O) を主語 (S) にした文のことを言います。だから後ろの目的語 (O) はなくなるんですね。
さて、この日本語を英語にしてみます。
He built the house.
この文の受身文を作ってみましょう。
目的語を主語にした文のことを受身文といいましたから、まずはthe houseを主語にします。
そして受身文は【be p.p.】の形で表します。
最後のby himは「彼によって」という意味になりますが、by (前置詞) +him (名詞)のカタマリなので、SVOCにはなりません。
受身文とは目的語を主語にした文のことですから、p.p. (過去分詞) の後ろには目的語がないということが大きなポイントです。これは分詞の所でも使う考え方ですから、よく覚えておいてください。
受身文とは、目的語(O)を主語(S)にした文のこと
受身文の形は S be p.p.
受身文は目的語(O)を主語(S)にしたのだから、p.p.の後ろには目的語(O)はない
SVO (第3文型) の受身文
さて、先ほど作った受身文はSVO (第3文型) の受身文でしたが、もう1つ英文を使って練習しましょう。
Columbus discovered America in 1492.
「コロンブスは1492年にアメリカを発見した」
「アメリカはコロンブスによって1492年に発見された」
p.p.の後ろの <by Columbus><in 1492>はどちらも【前置詞+名詞】のカタマリなのでSVOCになれません。
SVOO (第4文型) の受身文
目的語 (O) を主語 (S) にした文を受身文といいましたが、今回のSVOO(第4文型)は2つ目的語があります。
ということは、この文型の受身文は2種類あるということになります。
次の文を考えてみましょう。
He gave me a book. 「彼は私に本を与えた」
さて、この文の受身文を作るときに、meとa bookの2つとも目的語です。meとa bookのそれぞれを主語にした受身文を作ってみましょう。
O1を主語にする
「私は彼に本を与えられた」
O1を主語にしたのですが、目的語 (O) が2つある文なので後ろにO2が残っています。
O2を主語にする
さて、今度はO2を主語にしてみましょう。
I was given a book by him.
「私は彼に本を与えられた」
と同じ構造で訳すと
A book was given me by him.
「本は彼に私を与えられた」???
このように解釈する人はいないと思いますが、「私を与えられた」ではなく、「私に与えられた」わけですから、誤解がないように、meの前に「~へ」を表す前置詞 to を入れ、to meとするのが一般的です。
A book was given to me by him.
そうすると確実に「私に」という意味になり、誤解はなくなります。
とはいえ、そもそもこのような誤解を生まないために、O2を主語にする受身文は普通は言いません。
SVOC (第5文型) の受身文
SVOC (第5文型) の受身文について学びます。次の文は典型的なSVOC (第5文型) の英文です。
この英文を受身文にしてみると
となります。(nameには「名前を付ける」という意味の動詞があります)
ここで注意点。受身文は目的語 (O) を主語にした文のことですから、補語 (C) は主語にはできません。
Peko was named the cat. 「Pekoは猫と名付けられた」はおかしいですね。
使役動詞・知覚動詞の受身文
Lesson7とLesson8ではそれぞれSVOC (第5文型) の使役動詞と知覚動詞について学びました。
今回はそれを受身文にするとどうなるかということです。
使役動詞の受身文
She made me study.「彼女は私に勉強させた」
この文の受身文を作ってみましょう。
目的語 (O) のmeを主語にすると
こうすると問題が出てきます。
I was made study. だと、studyがVに見えてしまうのです。
けれど、SVOC第5文型のところでお話したように、studyは原形動詞でした。
そこで、「これは原形動詞だよ」ということを示すために、studyの前にtoを入れます。このtoは前置詞 to ~「~に」とは違い、動詞の前において、動詞を原形動詞にする働きを持ったものです。(こういうto do ~ のカタマリをto 不定詞といいます)
これは知覚動詞についても同じです。
知覚動詞の受身文
She saw him study. 「彼女は彼が勉強するのを目にした」
この文の受身文を考えてみましょう。先ほどの使役動詞の受身文と同じです。
日本語訳は「彼は勉強しているのを見られた」となります。
使役動詞や知覚動詞を受身文にするとき、SVOCのCの部分がdo ~ (原形動詞) の時は、必ず原形動詞の前にtoをつける。
⇒ S be p.p. to do ~. の形
句動詞 ( V +【前置詞+名詞】)の受身文
ここでは句動詞の受身文を学びます。句動詞とは一般的には動詞+【前置詞+名詞】の形になる、イディオム(熟語)のようなものと思ってください。
例えば次のようなものを句動詞とします。
speak to A 「Aに話しかける」
laugh at A 「Aを笑う」
look after A 「Aを世話する」
take care of A 「Aを世話する」
などです。
けれど、ここで疑問に思う人もいるかもしれません。【前置詞+名詞】はSVOCにならないんだったら、目的語がないから受身文は作れないんじゃないか?と。
実は前置詞の後ろにくる名詞を前置詞の目的語といい、目的語を主語にした文のことを受身文というのですから、実はこの句動詞の受身文も作れるわけです。つまり、前置詞の後ろの名詞を主語にした受身文が作れるわけです。
たとえば日本語で考えてみましょう。
「ある男が私に話しかけた」
↓(受身文にすると)
「私はある男に話しかけられた」
となります。
これを英語で考えてみると
となります。
ここで注意が必要なのは、spoke to meのmeだけを主語にしたので、toが残るということです。
こうした句動詞で受身文を作ると、それぞれの動詞の後ろの前置詞が残るということに注意しましょう。
speak to A 「Aに話しかける」
⇒A be spoken to(by ~)
laugh at A 「Aを笑う」
⇒ A be laughed at (by ~)
look after A 「Aを世話する」
⇒ A be looked after (by ~)
take care of A 「Aを世話する」
⇒ A be taken care of (by ~)
句動詞(phrasal verb)については様々な定義があります。広義には
動詞+前置詞+名詞
動詞+副詞
動詞+副詞+前置詞+名詞
の形になっているもの、などとするものがありますが、ここでは動詞+前置詞+名詞をはじめとする、動詞句の最後が【前置詞+名詞】の形になっているものを扱っています。
頻出の受身文
よく見かける構文に、They say that SV ~ というものがあります。この構文は学校などでよくIt is said that SV ~ に書き換え可能だと習います。それがなぜそうなるのかを理解しておきましょう。
They say that SV ~ のTheyは「世間一般の人」を表し、“誰でもいい人”です。例文を挙げてみます。
They say that he is honest. 「彼は正直だということを世間一般の人が言っている」
that he is honest は名詞のカタマリで、「彼は正直だということ」という意味のカタマリです(こういうのを名詞節といいます)
この文の受身文を作ってみましょう。
しかし、この英文、S(主語)が長くてV(動詞)が短いですね。
英語ではよく、『長いものは後回し』という原則が働き、That he is honest のカタマリを後ろに持っていきます。
すると
となりますが、S (主語) がなくなってしまいます。
そこで形式的に (仮に) It という主語を置いてやるのです。これを形式主語(または仮主語)といいます。
つまりは「彼は正直だと(世間一般に)言われている」ということになるわけです。(<by them>のthemは “世間一般の誰でもいい人たち” なので、無くてもいいだろうということで省略します)
ところで、「彼は正直だと言われている」の「言われている」は受身の意味になっています。そして「言われている」のは「彼」ですから、日本語に文型チェックをすると次のようにも考えられます。
ということは、It is said that he is honest. という文は、He is said …としてもいいということです。
ただし、He is said that he is honest.としないように注意しましょう。Heは後ろの that he is honest の he を前に持ってきたので、that の中の he はなくなります。また、そうするとis honestのS (主語) がなくなりますので、is honset の is は動詞でないようにしなくてはなりません。(He is said (that) is honest. だとおかしいでしょう?)
そこで動詞の前に to をつけると本当の動詞じゃない形 (動詞の原形) にすることができました
最終的に、「彼は正直だと言われている」を英語にすると、次の3パターンができます。
They say that he is honest.
It is said that he is honest.
He is said to be honest.
よく、They say that ~ =It is said that ~ と言われますが、このような理屈があるということも知っておいてください。
be p.p. の後ろの形
通常、受身文はbe p.p. by ~ の形になることが多いですが、最後は必ずしも by ~ となるとは限りません。
受身文の形だけれど、by ~ にならない代表的なものをまとめておきます。
❑ be absorbed in A 「Aに夢中になる」
❑ be accustomed to A 「Aに慣れている」
❑ be used to A 「Aに慣れている」
❑ be engaged in A 「Aに従事している」
❑ be interested in A 「Aに興味がある」
❑ be involved in A 「Aに巻き込まれる/関係している」
❑ be known by A 「Aでわかる」
❑ be known for A 「Aで知られている」(be famous for Aと同じ)
❑ be known to A 「Aに知られている」
他にもたくさんありますが、今のところは上にある分だけは覚えておきましょう。
まとめ
受身文はとても奥が深いもので、「目的語を主語にする」というだけでもたくさん解説しました。そしてこの内容の理解は、次の分詞という項目でとても重要なものになってきます。分詞の内容が少しでも難しいと感じたら、必ずここに戻ってきてくださいね。